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ここでは今回みなさん大注目の大屋さんのギターをご紹介いたします。といっても、もちろん会場でも大人気!
でしたので、2本お持ちになったうちの片方しかご紹介できません(汗。みなさんどんどん試奏なさっていましたのでw。
なんとか取材できたのはこちら。アコースティックギターマガジン22にも、大屋さんの紹介と一緒にJモデルとして 掲載されていますね!大屋さんはアコースティックギターマガジン上でも、お師匠さんのソモギ氏の翻訳をなさるなど ご活躍中です。わたしも大変興味を持って、食い入るように読ませていただいております。 さてこのギター、ボディスタイルは最近のSJと呼ばれるモノに近いようですが、一部でもささやかれているとおり?w、 「ジャンボなのかスモールなのか???」というw、SJという表記はどうもしっくり来ないと言うことで「J」とされています。 ボディサイズは大きくなっているそうですが、ロアーの幅が広くなったと言うことのようで、くびれるカーブや深さが それほど大きいのではないようです。おかげで抱え心地は大変収まりもよく、ど下手くそのわたしでもうまく弾けそうな…w。 押弦も楽に運指でき、弾きやすさは抜群です。テンション感はあまり感じませんが、スケールが短いわけではないので ネックの仕込みマジックでしょうか。弦高は人それぞれ好みが違うものですが、とても演奏しやすいと感じました。 |
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とても品のあるシェイプですね。派手な演出はないですが、非常に凝ったディティールがそこかしこにw。 バインディングはローズとメイプルの組み合わせのようです。ブリッジはハカランダで、両端が薄くなっていき、 サウンドホール側は均等にRを描いてトップに接します。マーティンなどではサドル部両側からきゅっと強く削り込まれますが、 近年はゆるいRで繋ぐスタイルが多く見られるようになります。きっと工夫があるのでしょう。 アッパー側はかなり小さくなっていて、ロアー側との差が結構あります。ロアー側の特にブリッジより下は、たっぷりと面積が あっていかにも鳴りそうです。Xブレイシングの交点がサウンドホールとブリッジのどの辺りになるのかが興味深いです。 くびれ部分を考えると、両者の真ん中ややホール寄りなんでしょうか。近年フォワードシフトのブレイシングが、Dで 多くなってきていますが、フィンガースタイルではボディロアーの形状で音づくりできるのかもしれません。 マーティンの場合、あくまでもあのDの形を保ったまま、というのがお約束でしょうからね〜。 それにしても綺麗なギターです。 | |
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このギター一番の?凝った職人技!!。ロゼットですが、ご覧のようにカービングで彩られています。 トップを細かく彫り込んでいって、そこにモザイクを象嵌したとても難しい仕事です。 サウンドホールから見えるバックはラダーブレイシング。かなり背が高く、幅が狭く見えます。 サイドとの接合部分は、あまり削り込まれていないようで、それがしっかりとサイドのブレイシングと組み合わせられています。 お伺いしたところ、基本的にサイドはしっかりと固める方向で、サイドを土台にしてトップとバックが自由に動けるように 考えていらっしゃるそうです。その点では、見えているサイドの木は割れ止めではなくブレイシングとなります。 この辺りはアコースティックギターマガジン22号に、興味深い記事が載っていますのでぜひご覧下さい。 サイドの板そのものは2レイヤーではなく、単板を使われているそうです。 そういえばやはりXの交点を繋ぐ補強はかなりしっかりしたモノに見えますね〜。サウンドホール下あたり、 左へ伸びる補強は見えている部分から考えるとけっこう背が高いです。サウンドホールの周辺はしっかり固められているようで、 指板側へ伸びるサブもやはりしっかりしたものでした。 | |
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渾身のアップ!w。いや、なかなかうまく写らなかったんですよw。
で、なんとかうまくいったのがこれです。この見事な刃の冴えをご覧下さい!よほど切れるものでないと、このような
美しいエッジを出すことはできませんし、丁寧で繊細な仕事でなければこれを彫ることはかないません。
だいたい、この菱形全部で何個あるんだ??w。一個失敗すると全滅ですから…、うひゃ〜〜〜(汗!
伺ったところによると、まずパーフリング部分の溝を彫り込み、そのあとまずこの菱形を彫っていきます。 全部カービングが終わったところで、後からモザイクを嵌め込んでいき、仕上げるそうです。とはいうものの、 よく考えてみればカービングした部分までサンディングしたらまずいじゃん!w。これは紙一重で止めてあると言うことです。 後で象嵌するので、菱形のエッジから嵌めたウッドの側面が見えています。後で彫るとそうはならないので、 嵌め込む技術も大変なものですね!。これらの繊細な仕事は、セラック塗装でよりいっそう はっきりとわかります。ラッカーなどで下地を強く作ってしまうと、この部分は埋もれてしまいそうです。 いやもう、大変なお仕事です。 |
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大屋さんより、正確な内容をいただいたので一部引用させていただきますと
まず溝を掘りますが、最内周のごく細い部分もトップ材を活用しています。 トップに溝を3本掘り、内側と外側はRW,W,Bのパーフリング材を対称になるように埋め、 センターの溝には別パターンの材を埋めています。 とのことです。溝を掘るのですが、最も内側は上の画像でもおわかりいただけるとおり、 きわめて繊細な幅しか残っていません。すごい!! |
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カーヴィングをします。一つ一つ手で彫っていくことになりますが、全体ではかなりの数になりますから、 本当に大変な作業だと思います。スプルースは細かい部分が欠けやすく、すべてを美しく仕上げるのには 相当な精神力がいりそうです。 わたしは今回の図版を作る程度の数を描くのもいっぱいいっぱいでしたw。 こうした装飾法は木の美しさを生かした、貝などとはまた違った表現法でわたしはとても好きです。 近年はギターのデザインにもいろいろな手法が取り入れられ、それを私たちが目にする機会も増えてきました。 「ボディデザイン」とともに、このようなディティールにも注目していきたいと思います。 | |
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最後に、バインディングやモザイクを嵌め込んでいきます。 真ん中のモザイクを中心に、内外周の溝にはローズ、白、黒を、それぞれ対象になるように組んで 嵌められています。黒のラインがカーヴィングの側に来るので、彫られた形状の立体感が よりはっきりとわかります。これらは後で嵌められるので、先にも書いたようにカットした斜めのラインが 黒を背景に浮き出ますから、エッジがよく見えるのですね。とてもすばらしいロゼットデザインです! | |
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サイド部分をとらせていただきました。非常にしっかりとしたリブがサイドのくびれ部分に当てられています。
雑誌にもあるように、カーフィングを三角形に切り取ってそこにきっちりと組み込まれています。
バックのブレイシングも、ぴったりとホゾが切られてそこに収められているのがわかります。
そういえばカーフィングは外スリット(今名付けたw)ですね。ボディ内側にスリットが見えるのが多いですが、
強度は、噂ではこの外向きの方が強いというのをどこかで読んだ記憶があります。
ボディ内部にはセラックの目止め塗装。内部に粉を吹いたような斑点が見えますが、これは画像処理の時のノイズです。 大変暗い画面だったため、ガンマ値やトーンカーブなどで処理を強くかけてあります。そのせいでデジカメの暗部のノイズが 白く飛び出してきますので、決して中が粉だらけということではありませんw、念のため。 サイドに見えるブレイシングはかなり本数が多いようです。見えているだけでも3本ありますから、全体ではけっこうな 数でしょう。この辺り各者によって全く違い、面白いのは私の所有するロイ・ノーブルはサイドにはこの手の補強は全くありません。 逆に、S Yairi ローデン505では片面6本で、全部で12本あります。こちらはそこそこしっかりした、 マホガニーのブレイシング様のものです。 いや、だからどうしたといわれると困るのですが…w。 サウンドホール両側にあるブレイシングの構造が、近年のフィンガースタイルモデルでは比較的剛性の高いものが 多く見受けられる様な気がしますが、今回大屋さんよりこのギターについてのお話をいただいています。 ********************************************************** サウンドホール脇のブレイシングは、音のコントロールを考えて形を決めてい ます。高さ(削る具合)の変化は、ネック寄りの端と反対側とでは変えてあります。 ********************************************************** とのことでした。なるほど〜。 |
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ブリッジです。特殊な形状的特徴というものは見られませんが、基本をきっちりと押さえて設計されているのでしょう。 とはいえ、エッジへかけてのカーブやトップとの接着面、両端の形状や厚みのあるサドル、サドルと平行なピン配列など、 細かいところはほんとうにいろいろ考えられています。「楽器の物理学」という本をつらつらながめている(読んでいるわけではないw) のですが、ブリッジの形状はとても重要だそうで、新たに考えるところが多々あります。そういう視点で見ると、やはりこれまでの 見方とは違った側面も見えてきて、製作者の方々の思いや考えというものに、改めて気づかされる次第であります。 | |
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ヘッドです。アフリカンブラックウッドだそうですが、サプも綺麗ですね〜。かなり厚みのある突き板です。
よ〜く見ると、ヘッドベニーヤとネックのマホガニーではヒールエッジに繋がる角度が違います。
白黒の部分でエッジラインが切り替わっているのがおわかりでしょう。これは、貼ってある板部分を斜めに
面取りしてあるからだと思います。厚みのある突き板はこのラインをきれいに見せるためでしょうか。
ヘッド自体はやや小ぶりの印象を受けます。このあたりはネックやヘッドの質量の関係なのかもしれません。
ナットは一般的なサイズより厚みがあり、細かなスキャロプがされています。白く飛んでわかりませんが(汗。
ナットに関してお伺いしたところ、大きめのものでしっかり弦を受けること、弦との接点はポイントではなく、
Rでしっかりと接点を作り、面で受けるようにしていること。などおっしゃっていました。
この辺りはいろんな考え方があるかもしれませんが、個人的には以前にも触れたとおり、接触面が多い方が音的に好みです。
ポイントで受けると、どうも音が細くなるような気がします。あくまで印象ですが。
ところで、小さいボディの方はご紹介できませんでしたが、こちらはボディが小さい分、サウンドホールの径を少しJよりも 小さくして低音を出しやすくしているそうです。 ボディ全体の固有振動数を下げることで出やすくする、と言うことだそうです。以下正しい解説を。 ********************************************************** 小さいボディの方は、たしかにサウンドホールを小さくしていますが、「低音のダンプを効かせる」ためではなく、低音を出しやすくするためです。 ボディ全体が剛体ではないので、必ずしも理論と定量的に一致するわけではありませんが、ボディとヘルムホルツの共鳴箱の類推から、定性的には開口部を 小さくすることで、箱の固有振動数を下げられるという考えに基づいています。 ********************************************************** との事です。ボディ内の容積に関する空気のダンプによる音の扱いと、ボディの固有振動数の扱いは全く別のアプローチだ ということがわかりますね。 物理学的な部分については、わたしは完全に専門外で、現在勉強中です!よくわからないことも含めて引用させていただいております! 今回は、大屋さんより多くのご教示をいただき、大変ありがたく思っております! 本稿では、それらのご指摘を受けての改訂を行っておりますので、 皆様にはより興味深いものになったかと思います。自作派はぜひ何かの御参考にw。そしてギター好きは大屋さんのギターに 改めてうっとりしてください! |