AFF 2004 その10


そしてこのホンジュラスローズモデル。SJなどからすると少しぽっちゃり系ですが、 音はとても輪郭のはっきりした綺麗な音です。分離がよく、一弦一弦がしっかり鳴る印象です。 しかもディティールにはかなりこだわった優れもの。よく見ると、バインディングはコアがパーフリングで、 色の類似したサイド面にはエボニーが黒のラインで引き締めます。ネックとサイドの接合は、 カッタウェイ部分も完全にシームレス。カッタウェイのRでネックに繋がります。 14Fジョイントなんですが、スラントしているのでだいたいそのあたりw。ブリッジもかなり傾斜している のですが、それを感じさせないよう逆の傾きを作ってバランスをとっています。材は真っ黒のハカランダ。 やはり近年はブリッジにローズ系の材を使う人が増えています。どのような傾向にあるのか、 きちんと調べてみたいですね。胴厚は通常のDくらいあります。容積としてはかなり大きい方ではないかと 思うのですが、音の立ち上がりもよく、音像もしっかりしているように思いますので、ブレイシングや 材の選び方などかなり工夫されているものと思います。
サイドのホンジュラスです。バインディングが黒いラインで渋いです。指板横にも綺麗なカーリーコア。 トップを斜めから見ていますが、コンターの部分が削れているのがわかります。つまり、この段差の分だけ トップが小さいと言うことなんですが、カーフィングが入っている部分がもちろんあるので、振動面は 同じ比率でもう少し小さいわけです。低音の反応が素早くなるわけですが、薄っぺらくなる可能性もあるので、 十分な振幅を持たせなければなりません。そのあたりをどのように設計していくかがとても難しいと思います。 小林さんは低音増をやせさせることなく、かっちりした音の方向へうまくシフトしていらっしゃいます。 また、ファンフレットというかなり大胆なしくみですが、音には影響せずにギターの欠点を補正するよう 良いバランスでの採用ではないでしょうか。    
バックです。これも美しいホンジュラスローズですね〜。今回フェアで、何本かのこの材を見ましたが いずれも非常に良いと思いました。マダガスカルに比べれば、まだすこしは低いレートで供給されるので、 とても有望な素材だと思います。実際には、インディアンローズも良い材はハカランダと何ら変わるところは ないものもあるのですが、近年はそういうものはまず見かけなくなりました。ソノケリンに近いような 少々軽めのものもあるようで、ブランド、名称にとらわれず良さそうな材は片っ端からw。 そうすることで結果的には伝統的な材もより永く、有効に利用できるようになるのではと思います。 そして、各材の使用、研究が進むにつれ、フィンガーにはこっちの方がいいとか、ブルーグラスには、 歌判用にはと、使い分けができてくるような気がします。

このギターもやはりバックはヒールごと一枚で貼る手法ですね。ネックとのジョイント部のスムーズさが おわかりでしょうか。ネックはブロックと一体なので、ヒールそのものをはるかに小さくできると思います。 ネックはマホガニーで、着色がないためかなり明るい色調です。もっとも、実際の色はもっと暗く、 ホンジュラスもかなり黒いです。木目を見せるためにやや強めの補正をかけてあります。
同じくヒールキャップ部分。ネックにサイドが入る構造のため、すべてを組み付けてからでなければ 塗装ができません。マーティンのように、後で組み込む工法だとネックとサイドの接合部に塗料が乗らない のですが、組み付けてから塗装すると往々にして塗料がぽってりと盛り上がってしまうケースがあります。 このギターでは、非常にシャープなラインが出ていて見事です。
接合部周り。指板は実はハカランダで、びみょ〜〜にサプが入っています。画像の一番上、エッジから ちょっとだけ見えていますw。色はほとんど真っ黒で、よく見ると少し赤みのある非常に質のいいハカランダです。 ボディ内のカーフィングはオーソドックスなこちらからスリットの見えるタイプ。そういえば、おなじRで 接合されているサイドって、どうやってネックブロックに刺さっているんだろう??いま気がつきました(汗。
サウンドホール部のアップです。指板に、いかにもハカランダらしいラインが少し見えます。 コアとアヴァロンを象嵌してロゼットのデザインとしています。ホールのエッジはやはりエボニーでとりまかれ、 トップの断面は見えませんw。この手法だと、実際のサウンドホールとイメージで見ているホールのサイズが 違って見えます。空いている穴よりも大きく見えるようになりますね。これをうまく生かせば、 ギターの表情も少し違った印象にできます。また、微妙なボディサイズの増減でホールのサイズを変える場合でも、 5〜6mmくらいならこれで加減ができます。実際の径との差を小さくできるので、面白いギミックになる かもですよ。それと、モザイクをそのまま入れられれば(耐久性に問題ありそうですがw)柄模様の断面が! 応用は幅広いかもしれません。

こちらでは、指板端の処理はホール径に合わせて切り取り、低音側をカービングしてアクセントにしています。 すこし残してある部分と、削られた部分のRは逆相になっていていわば対象型にデザインされているわけです。
サウンドホールから中をのぞかせていただきました。ブレイシングの形状はちょっと独特のもので、 センターにはっきりしたピークを持つ山型。そこからかなりの傾斜でエッジに向かって削られます。 エッジ部ではかなり薄くなっています。また、ブレイシングはマホガニーですが、材としてはスプルースより 固いため、削るカーブを強めにすることで特性を引き出しているのだと思います。 トップ断面部のエボニーがよく見えます。けっこうな厚みが持たされているのですね〜。
コンターです。小林さんの製作法は、「貼りつけ型」。ギターの重量を軽くするのは、これがやはり いいようです。あまり強いコンターの削り込みではありませんが、肘の当たる部分が、角で当たるのか ちょっと傾斜して当たるのかと言うだけでけっこう感じ方が違います。押さえ込むようなケースはあまりない フィンガースタイルですから、ちょっとした感覚が意外と弾きやすさを印象づけたりします。 製作手法としてはめんどくさいですが、効果はあると思います。
ネックブロック?側をのぞいてみました。大きく張り出したブロック下部が特徴です。 1番のバックブレイスはあまりとんがっていませんが、ブロックのすぐ下なのでやや小ぶりというか 背が低いのでしょう。センターのカーフィング、聞き忘れましたがひょっとしてコアなのでしょうか? 木目がどうもそれっぽいw。指板端の仕上げが別角度から見られますが、低音側の削りは 微妙にカーブを描いてフレット面に繋がっています。

さて、ネックブロックをよ〜くご覧下さい。3弦の辺りに音符が見えますね? なかなかの洒落心、遊び心だと思います。ギターづくりを楽しんでおられるのがよくわかります。 小林さんのことは、今回のフェアまで存じ上げなかったのですが、また一人良い製作者の方に巡り会えた!という 感じです。ぜひともいろんなギターを発表していっていただきたいと思います。

おわりに

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