GoJ 2004 シモギターズ

さて次は、志茂ギターさんです。
まずはブースの感じですが、やはり目をひくのはこのダブルネック! かなりスペシャルです。
そして、目立たない外観ながら中身はびっくりのショルダーサウンドホールの一本。
一番右のウクレレも、5弦ですね!とてもきれいなコア材です。
意外にも志茂さんはマックユーザーでした(笑。iBookでこれまでの製作過程やギターを
スライドショー展示し、デモとして使っていました。ちなみにOSはX。わたしゃぁ9erですよ(笑。
   
それではダブルネックから! このギターはとても面白いコンセプトでできています。それは、

「もし1930年代にWネックをマーティンにオーダーして、もし受けたなら
どんなのができただろう?実際には受け付けられなかったが、それを21世紀
のいま再現したら、どんなギターになるのか?」
というものです。実際、当時オーダーは受けてくれなかったそうですが、そのときもし受注していたなら? こんなのができたのではないでしょうか。まず、ボディをよく見てください。実は全体のシェイプは 今で言うSの形です。実際には少し幅を持たせてありますが、ショルダーのアールやボトムのカーブなどは そのまま使われています。写っていませんが、本来ネックのある位置にはエンドと同じ台形のセルが! 将来的にはエンドピン?も打つ予定だそうです。ボディの細かいインレイなども、マーティンの45と同じです。 ところが、この中身は全く違います。21世紀です(笑。ブレイシングはなんと、カーシャ・クライン構造が 基本になっています! センター(つまりサウンドホールの間)にはXでなく、真っ直ぐのバーブレイシングが 伸び、ブリッジサイドからも縦にバーが伸びます。それらを細かいファン?がつないでいくというものの ようです。実は、残念ながら展示の都合上スタンドにくっついていて(笑、中を見ることはできませんでした。 そうそう、材もちゃんと?、アディロンにハカランダです(笑。プリウォー仕様ですね(笑。    
次はこの不思議なブレイシングのギターです。 そもそも志茂さんがおっしゃるには、「もともと内部構造なんてぜ〜んぜん興味なかった」そうです(笑。 それが、以前アメリカのショーに行ったとき、「そのときには全く意識していなかったが、いろいろなものを 見ることで知らない間に影響を受けた」そうで、帰国してしばらくたったある日突然「やってみよう!」と 思い立ったそうです。それからいろいろな試行錯誤をはじめて、スパニッシュの製作法やドイツクラシックギター、 カーシャやクラインのアイデアなどに、自分なりの解釈を加えていって今に至るのだそうです。    
そうした過程で作られたこのギター、一言では表せない構造になっています(笑。とりあえずサウンドホールは 肩の、それも高音側ですが、これも低音側の振動板面積を多くとるためで、穴から見えるXはバックとは接して いなくて、浮いています。ボトム下には放射状のバックブレイスに、これまたフライングのXがサイドと結合して 剛性を出しています。面白いのは横向きにサイド同士をつなぐバーで、マホガニーのラミネートになっていますが、 木目の方向を考えたとても面白い構造になっています。    
まず、通常の木目の通り方だと、大きくアーチをかけた場合、左図のように木目がエンド端で切れてしまいます。 そこで、欲しい角度でお互いに斜めになった材を合わせることで、末端から中心までしっかりした剛性を確保 するという非常に興味深い構造です。え〜、皆さん、ついてきてますか?(笑。オッケーですか???(笑。 え、まぁそのような構造部材が、いろいろなところに使われてこのギターの特徴をより強いものにしています。    
それから、なんと言ってもこれのもう一つの特徴は、このバスレフポートでしょう。 実は雑誌で見たとき、「果たして効くのだろうか?」と思っていました。わたしは自作スピーカの経験があり (エンクロジャーですよ!)、バスレフの効果は知っていましたが、それはあくまで密閉型に付けたときで、 サウンドホールがあるギターでは共振周波数を拾いこそすれ音圧は満足なレベルで稼げるのだろうか?と 不思議でした。今回お話を聞くと、まずは容積に対する低域共振を稼ぐためと、やはりサウンドホールがあることで 一般的な式で求められるポート長より長くなっているそうです。最低共振周波数は容積、開口面積と長さですぐ出る のですが、開口面積を大きくするより、ポート長を長くすると言う考え方はとてもよくわかりました。 実際の音を聞くと、そういった理屈云々よりももっとはっきりポートの効果がわかります。低周波数域にしては 指向性がやや強いのはやむを得ないと思いますが、アイデア次第で非常に面白い効果が期待できると思いました。    
肝心の音ですが、これはもう独特のものです。スプルース、ローズというごくオーソドックスな材ですが 音はまるっきり不思議な感じで、どことなくナイロン弦の音がします。それにエコーをかけてサスティーンを つけたような…。録音でも、とてもいい音がとれそうですが、穴があっちこっちにあるのでマイキングだけで 半日はかかりそうです(笑。ミックスの人は鼻血必至でしょう(笑。    
ここでちょっとウクレレにも触れておきましょう。 実は他にも様々なお話(クラシックギターの製作法とかアイデアの転化とか)をお伺いできたのですが、 ちょっと はしょらせていただきます。 このウクレレのネックブロックをまずはご覧下さい。カッタウェイなんですが、サイドがブロックに巻き込まれる形で 接着されています。クラシックの製作法からヒントを得て、ウクレレに利用しているそうです。 なかなか良いと思いませんか?    
図で表すと、このようになっています(たぶん。サイドがブロックと接する面積が多くなり、小型の ウクレレのようなケースでは剛性が稼げて良いですね。差し込むだけではちょっとだけになっちゃうかもです。 ギターでやっても、なかなか良いと思いますがボルトオンではやりづらい??(笑。    
そしてこのブリッジですが、弦止めの穴が2個あいています。そうすることで、 従来テンションを落としてしまう方向の繋ぎ方をせず、ブリッジとサドルの角度を大きくしたままにすることが できるようになったそうです。また、従来の方法でもつなげるので、いわば2ウェイブリッジでしょうか。 ちなみにこのウクレレもカーシャ・クラインスタイルのブレイシングにバスレフポートつき(笑。


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