アコースティックファンフェア2004

●はじめに

今回初めて、アコースティックファンフェアに参加させていただきました。
会場でお世話になった皆様、また、丁寧なご説明をいただいた制作者の皆様、
本当にありがとうございました。改めて御礼申し上げます。

ここでご紹介する様々な事柄は、あくまでギターを楽しむ上での、ほんの些細な事柄にすぎません。
それぞれの制作者の方が、いろいろなアプローチで製作し、それを私たちが体験できる、
ほんのちょっとした紹介のようなものですから、ぜひその個性を楽しむきっかけ程度にお考え下さい。

最初にご紹介するのは、おなじみTORUギターの大西さんです。以前の大阪のアコフェスでも ご紹介しましたが、今回は新たに12Fジョイントのモデルを新作で発表されました。 また、同時に前回のギターに少し手を入れ、リファインして登場です。 いずれも美しいプロポーションを持ち、ブレイシングもいろいろと工夫が成されています。 とても興味深い設計になっています。    
これは、OOOサイズのボディにシトカ、マホガニーの組み合わせで作られたもので、 細かいところにも気を配られた仕上げが特徴的な一本です。指板には非常に綺麗な フラワーインレイが入れられ、シンプルなのですが上品なボディ仕様に華を添えています。 OMスタイルの小型のピックガードもタートス模様で良いアクセントですね〜。 ブリッジは横に長く、ボディバランスと良いマッチングのようです。 実はブレイシングは単純なXにサブが2本の組み合わせではなく、ブリッジ寄りのサブ一本と、 それに直交するようにボディエンド側へ2本のブレイスが伸びます。 また、Xの両サイド、通常は平行にネック側へ伸びる2本ずつのブレイシングも、 少し開きながら斜めにセットされ、ブリッジとの関係を作っています。

音は、小さなボディですが決してボリューム不足にならず、きらびやかな高音が印象的な とても「気持ちのいい」鳴り方をします。最近では小型ボディとはいえなくなった感のある OOOサイズですから、フィンガーにも最適なバランスが印象的でした。
美しいインレイです。正式には何という名前かは知らないのですが、 バランスの良いボリュームで正確なカットと相まって精緻な印象を受けます。 マホガニーモデルは往々にして18スタイルの印象があるのか、簡素な仕上げになることが 多いのですが、大西さんはローズとラインのバインディングやロゼットのシェルとともにギターの 雰囲気をうまく作っています。ワシも見習わねば!w
バックです。ここでも、バインディングのバランスの良さが伺えます。 センターのシンプルではっきりしたラインが、うまくサイドと繋がっていて今風?ですw。 ローズの色合いがきりっとしたラインを作り、まとめています。 マホガニーは最近いろいろと状況が変化し、このままでは稀少材になる可能性も出てきました。 良い品質のものから少なくなっていっているそうで、マホガニー好きの人はちょっと どこかの時点で「えいやっ」と踏ん切りが必要かも???w

ところで、くびれのところに小さな葉っぱのインレイが見えますね。 ちょっとした遊び心だそうです。こうした遊びはルシアーものならではの楽しさです。
こちらは、大阪にも来ていたキルトマホガニーのタイプです。 オーナーさんの手元でしっかり弾き込まれ、以前とは少し違った表情を見せています。 大阪では完成して数日というコンディションでしたから、塗装もしっかりした今回は より輪郭のはっきりした音になっていました。ネックも非常に弾きやすいシェイプで、 運指もとても楽にできます。もっともわたしはへたくそチンなので、それほど難しいことが できるわけではありませんがw。あ〜〜、またバックを撮るのを忘れた(汗。 見事なキルトマホガニーです。これも稀少になってきてますね〜〜。
こちらはシダートップのモデルです。美しいマダガスカルローズのバックです。 センターにはシェルインレイですね。ちょっと豪華な感じです。 こちらは大阪の時より細かいところがリファインされ、オーナーさんの希望もより反映された 仕様になっていました。こちらのモデルは上のマホガニーのもそうですが、ブレイシングが Xに3本のファンブレイシングを組み合わせたものになっていて、トップの横方向の動きが多くなる 構造ですが、今回はその辺りのバランスに少し手を加え、細かな調整をされたようです。 音は以前よりもよりくっきりしたような感じで、かといって固いものではなく幅の広がりを感じる 音づくりのようでした。レスポンスの良さは相変わらずで、弾いていて楽しいギターになっています。
ネックジョイント部です。ヒールに綺麗なインレイがいいですね〜。 ハイフレットまでスムーズに移動でき、わたしでも弾きやすさがわかります。 カッタウエィは細かなRを描いていますが、こうした曲げはかなり難しいようで、 サイドの材にもよりますが丁寧に曲げていかないといけないそうです。

マダガスカルローズはいまでは完全にポピュラーで、しかも高級材として広まっていますが、 そのぶん価格も以前より高騰し、良質のものはずいぶんと高くなりました。 様々なサプライヤーで扱われるようになったぶん、材の位置づけもアップしているようです。
特徴的なTORUギターのヘッド形状ですが、裏にはこのように綺麗なバーズアイメイプルが 貼られていました。ヘッド形状はオリジナル性も重要なポイントですが、ポストの配置や 弦の取り回しにも関係するため、各製作家の人たちのアイデアの見せ所ともいえるでしょう。 今回出展されていた皆さんは、ホントにいろいろアイデアをお持ちでした。面白い! このギターのペグは今では手工系の定番にもなりつつある510ですね。 やはりいろいろなチューニングをするので、ペグの精度はとても重要なのでしょう。

大西さんの工房は今回水害で大変な被害を受けられましたが、こうして出展されましたことは 本当にご苦労があったことと思います。いち早い復興とご活躍をお祈りいたします。

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