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今回はロンジンの、それもトノータイプをご紹介です。 このタイプは、数は案外出回っていますが、趣味に合うモノは なかなか出会えないものです。それぐらいタイプがたくさんあり、 ケースバリエーションも豊富です。ステイタスよりファッション重視の 販売戦略だったので、その分選択肢が多くなっているのでしょう。 これももともとはアメリカで、1940年代に売られていたようです。 また、その時期のご多分に漏れず、アメリカでの製造として売られました。 ケースのことも含めて面白い時計だと思います。「世界の腕時計66」 のP21にある「ハンフリー・ボガート」のものとは全く同時代のモノです。 |
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サイドからですが、上手く写りませんでした!もうしわけない! この時計は、サイズはかなり小さめで、スーツによく似合うタイプです。 おかげで最近はほとんど着けませんが、カジュアルにも上手くマッチする と思います。特にベルトを変えれば、けっこうイイ感じでいけるでしょう。 そもそもこのタイプは、当時流行った「グリュエン」の「カーベックス」という モデルにあやかったもので、各社類似の製品を販売していました。これは、 腕によりフィットするようにケースが曲がっているもので、この時計も そのようになっています。グリュエンはムーブメントまで曲がったタイプを 製造していましたが、これは単に小さなムーブを入れてケースを曲げただけです。 全体のデザインは、アールデコの影響の品格のあるもので、とても気に入っています。 当時としては、それほど高価な部類には入りませんが、イイ時計だと思います。 右の写真で、底部が湾曲しているのがわかるでしょうか? |
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ケースとの分離はこのようになります。昔の懐中時計では、 投げ込み式と呼ばれる、横に開いてムーブを引き出すタイプがありますが、 これはもっと簡単で、アウターの表側とムーブが組み込まれた裏側が 上下の突起で引っかかっているだけです。とてもスポーツなどはできそうも ないですね(笑。ケースの素材は、ル・クルトと同様のGFです。 このケースの欠点は素材の肉厚が非常に薄いものになってしまうことですが、 リューズの切り欠き部でもおわかりのように、このケースもかなり薄いです。 文字盤はもっとも気に入っているところで、金の切り抜き植字がとても 上品な雰囲気です。これは、一旦打ち抜いたものをきちんと仕上げてあり、 エッジは非常に鋭角です。面もきっちりでています。最近ではプレスで 打ち抜くだけなのでエッジが甘く、文字も少し現代風です。 |
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ムーブメントと裏側のケースです。裏側のケースはさすがに堅牢にできていて、 十分な強度を持っています。内側に書かれた文字は、 10K GOLDFILLED CASED & TIMED IN U.S.A BY LONGINES などです。この文面からもわかるように、部品をアメリカに送り、アメリカで 組み立てられたと言うことです。ル・クルトと同じように、関税の軽減を 図ったものですが、当時の関税はそれほど高価だったのでしょうね。 そして隣が真打ち?のムーブメント。俗に「9L」と呼ばれるものですが、 サブ番号で「25-17」となっています。非常に奇麗な仕上げで、さすがはロンジン と思わせるものです。ルビーはシャトンに入れられ、止めてあるネジは ブルースチール仕上げですが、いまは色が酸化して変わってしまっています。 テンプの調整はスワンネック調整針を持ち、高級なムーブであることがわかります。 表面のコートドジュネーブも見事なものですが、エボーシュの中にはびっしりと ペルラージュ仕上げが施され、見えないところまで完璧に仕上げてあります。 また、それぞれの歯車は鏡面に磨き上げられ、ゼンマイ車と補助車はヘアライン 仕上げ。歯車の一部は金メッキ処理するなど、手の込んだ「美しい」機械です。 17石ですが、パテックに負けないとの評はあながち間違いではないでしょう。 ただし、現在の価格でははるかにパテックには及びません(笑。 |
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サイズをお見せしましょう。ムーブ自体は3cmありません。裏ケースもせいぜい3cm。 これほど小さなスペースに、多くの歯車を詰め込む技術と設計力は、すごいですね。 しかも、縦型ムーブにすることでゼンマイの巻き上げにムリが生じるので、巻き上げ機能に 歯車を追加してさえあります(笑。もっと狭くなってしまっています(笑。 よく見られるコートドジュネーブは、ムーブのエボーシュに対して斜めに入って いるのですが、この機械は真っ直ぐで、しかも幅の狭い精密感あふれるものです。 もっとも、通常の幅で入れると2〜3本入ると終わりになってしまいますから、 狭くしないとかっこよくなかったのでしょうね〜。ところでこの画像などですが、 何気なくひっくり返してありますが、実はこの表側には全ての針がついたままで、 けっこうドキドキな体勢です(笑。古い時計は何度も針を取り外しされているので ムーブ芯との嵌入があまくなっていて、この時計では秒針が外れやすいです。 特に、ムーブは真っ直ぐですが文字盤はケースに合わせて曲がっており、おかげで 針に負担がかかってしまっています。機械の凄さと共に、ケースの設計の適当さが(笑 なんとも不思議な取り合わせではあります。 アンティークならではの楽しみといえるでしょう(笑。 |