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さて本題の?クロノグラフムーブメント レマニア1883です。この機械は通常のクロノグラフに、文字盤側に
日付とムーンフェースを置いたきわめて複雑な構造のムーブメントです。現在見えている側からは日付関係の構造は
見えません。これらはクロノグラフを動かすためのものです。基本的な構造は、オメガの現行スピードマスターに使われて
いるものと変わりません。頭に1がつくのは、オメガも同じですがロジウムメッキを表します。この機械も、ほぼすべての部品が
そうなっています。通常は真鍮色のテンプやクロノ針用の歯車なども、メッキされていて耐久性を上げてあります。
実際には、これを購入したときはテンプやその他の歯車は真鍮色だったのですが、3度ほどのオーバーホールを経て、
このような形になりました。ちなみにオーバーホールは針一本につきいくらというのが多くw、この時計の場合6万円!!
一回にかかります。 この機械は、現代的な設計なのでコラムホイールを持たず、カムによって駆動します。そのためプッシュはコラム式のもの よりやや重く、レマニアによく言われる硬さ感があります。 石は17石。クロノにしては少々少ないのですが、販売価格を考えれば妥当なところでしょう。さて、先に述べた件ですが、 この時計は元もとそれほど高くない値段で販売されたもので、当時機械式のムーンフェースつきクロノとしては激安でした。 レマニアというメーカーのムーブを積むことは、それほど珍しいことではなく、ごく低価格のクロノがETAの7750系を使い、 それ以外のオメガなどでは当たり前のようにレマニアを使っていました。ところが、先般のスイスメーカーの大変動により、 ムーブメントメーカーも各グループの編成に巻き込まれ、グループ以外へのムーブの供給ができなくなりました。 ホイヤーはレマニアとは違うグループに入ったため、この時計はとても特殊なものになってしまいました。 |
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ホイヤーは、これ以外の当時の時計はやはり多くがETAのキャリバーです。現在でもそうなんですが、それに加えて
新たにグループ入りしたゼニスとの関係から、ホイヤーの高価格クロノにはエルプリメロが搭載されるようになりました。
これまでは特殊な場合をのぞいて、そのような高級ムーブを積むことがなかったホイヤーですが、今ではレマニアの代わりが
ゼニスという図式になっています。それだけにメーカー修理も微妙な立場でw、問題があるわけではありませんが基本的には「よその」
機械と言うことになってしまいました。 このムーブメントは、仕上げにはさほど気を使わずあっさりしたものです。それでも見えない地板部分にはペルラージュなど 施され、いくつかの部品も磨かれています。もし今なら、この機械は徹底的に磨かれ私たちの手の届かない価格で販売され そうです。もっとも手に入れやすいオメガのスピードマスターには、ムーンフェースこそありませんがシースルーバックの ものがあるので、綺麗に仕上げられた同じ構造を見ることができます。 今ではコラムホイール付きが高級品として広く知られるようになりましたが、カム式は少ない部品と簡単な製作過程で、 正確な動作ができるので量産には向いています。プッシュ時の硬さはありますが、著しく劣るわけではないのであまり 気にすることはないと思います。もちろんコラム式は優れているのですが、クロノグラフという時計を楽しむのには カム式も大切な時計の一つだと思います。機械的にもこのムーブは、とても面白いものではないでしょうか。 |
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最後にものすごく簡単な機構のご紹介を。 まず、今の状態はクロノが動いていません。クロノ針はもっとも真ん中の歯車で回転します。歯が細かいためギアが見えませんw(クロノ用歯車)。 プッシュを押すと「クロノ針に繋がる歯車」が赤い矢印の方向へ動き、かみ合うことで「秒針(歯車)」の動きを伝え、計測を始めます。 もう一度押すと、今度はストッパーが緑の方向へ動き歯車を止めます。こうして計時したり止めたりし、ストップウォッチとしての機能を果たします。 カムは、それらの動きを各ギアに伝えるためカムに連接するバーを押したり下げたりしつつ同じ動きを繰り返します。ここでは往復運動に近いです。 コラム式ではここに切り込みの入ったホイールを持ち、切り込みに入ったり押し出されたりすることで同じ動作を伝えます。この場合では 回転運動となり、復帰動作がない分スムーズに各部が動きます。このため、コラムホイールの製作の難しさと相まって、コラムホイールの方が 高級とされる所以です。言葉で説明するのは大変なので、興味のある方はぜひ何か書籍などご覧下さい。 このムーブはスムーステンプで、チラねじやジャイロマックステンプのようなテンプ自体の調整機能を持っていません。 これらがあると、追い込むと大変な精度が出せますが、逆に調整が難しくなり今では高級品になっています。特にジャイロマックステンプは パテック独自のもので、ベースムーブメントを供給するオーディマピゲなどがまれに使っている程度です。現代の技術では、スムースでもある程度の 満足できる精度が出せるので、多くのムーブはスムーステンプになっています。 |
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あとがき クロノグラフは、時計に興味を持ち始めると最初に欲しくなるタイプですwたぶん。 自分で計時できるというおもしろさが何よりで、このクロノを持っていて何か役立った!という経験は一度もありませんw。 ですが、クロノを持っていることで時計のおもしろさが何となくわかり、さらにいろいろな時計や構造が面白くなりました。 かれこれ10年以上使い続けていて、渡英時にも持っていき、故障したので修理したりもしましたが今では良い思い出です。 修理はマンチェスターで行われてましたw。新しく保証カードも発行してもらい、旅行中に立ち寄ったヨークの時計店では 「珍しい時計をしているね!」と言われました。「これを知っているの?」と聞くと、「うちで1個だけ売ったことがある」と いう返事でした。高価な時計ではありませんが、こうした事に巡り会うのもまた楽しいではありませんか! |