◆ 505 '82 ブレイシング

まず最初に、ブリッジプレート付近です。かなり大きなものであることがわかります。
また、特殊なのは木目の方向で、普通ブリッジに対して平行、つまり横向きに使うのが
一般的ではないかと思うのですが、このギターでは縦方向、つまりトップの木目と平行に
配されています。厚みは通常のものと変わりません。約3mm程度でしょうか。あくまでも
手を突っ込んでみての感触(というか触感)です。材はローズでしょうか。ハカかも知れません。
つぎに、X内のサブブレイスですが、よく見ると3本あるのがおわかりでしょうか。
画面左下に、少しだけ見えていますね。形状は幅の狭い鋭角三角形。ブレイスの中央が盛り上がり、
なだらかに両端に傾斜していきます。マーティンなどに見られる、端だけを削ったようなタイプでは
ありません。エンドブロックはまさにかまぼこ型で、丸く仕上げられています。
   
次はややトップ側寄り。3番目のブレイスが半分ほど写っています。
Xブレイシングの交点付近も、スキャロプによって浅く削られているのがわかります。
上の画像ではサイドに向かって、ほとんど厚み無く接するブレイシングですが、
Xブレイシングとはけっこうしっかりと接しています。ホゾを切って組んであるかどうかは、
この画像からはわかりません。3本のサブとも、サイド端へはなめらかに曲線を描き、
ほぼ真っ直ぐか、やや膨らんでRがつくのに対し、X側へは少し削り気味に、へこみながら
つながっています。このあたりの微妙なカーブがルシアーの経験と腕の見せ所かも知れません。
ちなみにうちのカメラは、マクロ側への合焦は不得手のようで(汗、どうもぴったりピントが
来ません。画面が眠たいのはご容赦下さい。ちなみにトップに見える黒い筋は、センター出しの
   鉛筆の線と思われます。これを基準にネックやブリッジのセンターを合わせていきます。
これはかなり寝た角度での画像。3本の山がきれいにバランス良く配されています。
ブリッジプレートの形状ですが、上などの画像からもわかるとおり、大きく、また
左右は非対称になっています。一番手前のサブブレイシングが斜めに切り取るように
プレートと干渉しています。見たところ重ねたりしているのではないので、形状がこのような
変わった形だということですね。ただ、最近のモーリスSも、ブリッジプレートがかなり大きく、
特徴があります。ただ、このギターはピンレスで、トップを引っ張り上げる力の掛かり方が
ピンタイプとは大幅に異なりますから、そのあたりも考えねばならないところでしょう。
これはネックブロック付近の画像です。ご覧のように、Aフレームががっちりと
ネックブロックにかみ合わされていますね。アジャスタボルトはアーレンキタイプです。
このおかげで、手前のトランスバースバーの奥でも回すことが出来たのだと思います。
六角ナットタイプでは、少しムリがあるかも知れません。ナット上に見えるのは
指板の裏側だと思われます。ネックブロックの形状は、四角の角を落としたもので、
ごく普通のものです。L型とか、特殊なものではありません。当時の国産の一般的なものと
かわりはありません。残念ながら、Aフレームが手前のバーを突き抜けているところは
撮れていませんので、後日別画像で撮影してみたいと思います。
この画像は新しく入手した505のものです。構造は両者とも同じです。
これがたぶんXのトップ側端だと思うのですが、ちょっとハッキリしません。
右側に少しだけ、もう一本写っているので、もう一度よく調べてみます。
ブレイス端は、ご覧のようにやはり大きく削ったものではなく、クロス部からなだらかに
末端まで傾斜しているようです。手で触ったところ、波打っていましたので軽い
スキャロプ状態でしょう。もっとも、ブレイシングの形状自体が鋭角三角形で、
背の高いタイプですので、それ自体がすでにスキャロプドブレイシングの考え方を
反映させたものと考えることもあります。ただ、背が高いと行っても通常よりほんの
少しぐらいで、次にバックブレイシングをお見せしますが、あれほどのものではありません。
トップのブレイシングの幅は狭くして質量は軽くし、その分全体を保持する剛性は落ちるので
3番目のブレイスを加えることでトップの剛性を確保しているのかもしれません。
ブレイシングの形状は、断面との剛性との兼ね合いと振動伝達の考え方からあのような
なだらかな削り方なのでしょう。現代手工ギターに見る、トップのいろんな動きに対応する
トップの考え方が、この時期すでにほぼ考えられていたと思います。
サイドに見える木の小片は割れ止めなんですが、かなり多くの部分に配されています。
片側につき6箇所で、全部で12箇所ですからけっこう多いと思います。形状は単なる棒では
なく、山形のペッタンコで、両端を斜めに切り落としてあります。手が込んでますね。
最後に、バックブレイシングです。あまりイイ角度ではありません(汗。
背の高い3.4番がわかります。幅は約1cm程度で、従来の伝統的な考え方からすると
相当狭いものです。バックは全て両端を従来のようなえぐるような削り方で成形しています。
このあたりの画像もいずれ追加します(汗。特徴的なのは幅と共に、2番の形状でしょう。
1.3.4番は幅の狭い背の高い二等辺三角形で、頂点は底辺の真ん中付近にありますが、
2番だけは明らかに意図的に頂点がずれており、直角に等辺三角形です。垂直面はネック側で、
底面が1、ネック側が2、エンド側がルート3の長さと考えて下さい。実際の比率はこれとは異なりますが、
辺の配置と言うことで。正確には各辺とも柔らかなふくらみを持っており、直線で処理された部分は
ありません。ブレイスの頂部のラインも、ゆったりとした曲線で、このあたりも手作り感が強いです。
明らかに手で成形しないと出来ない形状を多用しており、かなり面倒な生産であったと思われます。
トップもバックも、ドーミングは今の手工ほど強くなく、ごく普通のカーブです。

とりいそぎいま手持ちの画像をアップしましたが、もっと詳細な部分も必要なので、
撮り次第順々にアップしたいと思います。また、外観の画像もいくらかありますから、
それらも別のページでご紹介したいと思います。皆さんのご存じのことなどありましたら、
是非お知らせ下さい。また自分のはこんな風になっているなどありましたら是非お願いいたします。

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