Le Coultre

ルクルト481

最初の記念すべき?一個目は、ル・クルトの自動巻です。
Cal481が、今では有名?でしょう。なぜこれを最初にしたかというと、世界の腕時計64で取り上げられて
いたので、タイムリーだったこと。ジャガール・クルトとはちょっと違うこと(笑。でしょうか。
キャリバーは、ル・クルトが作った第2世代の、半回転式自動巻ムーブメントです。これはベースムーブがバセロンにも
使われていました。バセロンはよくル・クルトとオーディマピゲのキャリバーをベースにして利用していたので
特別!というわけではないでしょうが、巻き上げ効率は他の半回転式と比べると、相当優れていたようです。
当時では超高級品、というわけではありませんが、仕上げの美しさや地板の切り方の美しさは、現代のモノと比べても
まったく劣るところはありません。当時は腕時計自体が高価な商品だったので、機械の仕上げも現代では考えられないレベルです。

Cal.481

ここで少し、ジャガー・ル・クルトとル・クルトの関係を。
この時計は1948年頃のモノですが、現代と違って当時はアメリカもスイスに負けず劣らず時計産業が発達していました。
そこで、スイスからの製品輸入には関税が多くかかっていたのです。そこで、部品を輸入し、アメリカ国内で組み上げることが
盛んに行われました。スイスメーカーとしては、アメリカマーケットを手放すわけには行かなかったのです。
ジャガー・ル・クルトも、アメリカ用ブランドとして「ル・クルト」を立ち上げ、スイスからは未調整品の名目でムーブメントを輸出、
国内で組み上げて販売しました。それがこのル・クルトです。アンティークをお持ちの方は、よくムーブメントに”アンアジャステッド”
と表記されたモノを見かけると思いますが、これはアメリカが製品の輸入に関税をかけ、保護していたための処置で、あくまでも未調整品の
部品としての輸入だったからです。もちろん精度は劣るモノではなく、ケースに組み込めばスイス製と何ら変わりませんでした。
このムーブメントでも、ルクルトのロゴの前にぐにゃりと曲がった並べ方でUNADJUSTEDと見えますね。

この時計は、当時アメリカで流行っていたロールゴールド(メッキではなく、薄い真鍮などと金の板を合わせて圧延したモノ)で、
メッキよりはるかに品質のイイものでしたが、ケースは薄い板で作られるためあまり丈夫とは言えません。ステンレスケースのモノの方が、
現在では高価で流通しているようです。しかしご覧になっておわかりのように、金の板を打ち抜いた植文字や、ブルースチールの針など、
なかなか味のあるデザインではありませんか。ラグもアールデコの流れを汲む洒落たモノです。何よりも、この時計の特徴である巻き上げ量の
わかる小さな窓は、パワーリザーブと言うには少しおこがましいにしても大変気の利いたアクセントです。現在は巻き上げられていないので
赤いですが、十分巻き上げられていると、数字の書かれた白いモノになります。今は秒針の下に微かに0が見て取れますね。


機械の精度としては、追い込んだ調整がされていないにも関わらず日差で15秒ありません。60年近く前のモノとしては、とても優秀と言えるでしょう。
また、ハンマーのスプリングがこつんと当たる感触は、この時代のモノならではです。機械を身につけていることを感じ取れる、
とても楽しい時計だと思います。



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