アコフェス 2005

さて、今回初めて拝見したのが戸田さんのギターです。以前よりお名前はお聞きしていましたので、 この機会にお話をお伺いできればと楽しみにしていました。アコギの他に、ウクレレもたくさんお持ちになっていて にぎゃかで楽しいブースセッティングになっていました。

こちらが今回のアコースティックギターです。格段フィンガーに特化しているわけではなく、 フラットピッキングでもストロークでも、応答良く音の暴れないギターが基本だそうですが、いまのところ フィンガーの人たちの評価がより高いようです。 トップは30年ぐらいを経てよく乾燥したシトカスプルース。 サイドバックはこれまた40年くらいを経たマホガニーです。長く寝かされた材料は、乾燥も大きなメリットですが やはり歪みの無さも良い点ですね。ボディデザインは少しヨーロピアンな印象もある、すっきりとしたバランスの良いものです。 シンプルに見えますが、なかなかいろいろな点が工夫されているすばらしいギターだと思います。    
清潔感さえ感じるクリーンなバックスタイル。バックのマホガニーはきれいなリボン杢が見えます。 ヘッド裏にはプレートが貼ってあり、ネックヒールは非常に低くてすっきりしています。 ボディデザインはロアーの幅のあるジャンボスタイルですが、ややコンパクトな感じでSJサイズですね。抱え心地も良いものです。
指板、ブリッジともハカランダ。トップのシトカはシルキーな目が細かく出て、シトカらしいやや赤みのある細かい木目の 良材です。そしてデザイン上のポイントはロゼッタの象眼です。コアとメイプルの木目をうまく生かした、帯をひねった切り違いのある凝ったデザインです。 素材を埋める溝も、リング状に一気に抜けないので丁寧な手作業になるものと思われます。細い木のラインもきっちり揃っていて、繊細な表情になっています。 バインディングはごくごくシンプルなワンライン。ローズでしょうか。
ヘッドは戸田さんのギターに共通するオリジナルデザイン。ヘッドプレートは珍しくウェンジです。 ペグボタンも変わった素材で、ローズでしょうかと伺ったところ、「いや〜、あんまりそういうことにはこだわらないので忘れちゃいましたw」と 職人さんらしいお答え。とりあえずゴトーのペグですw。
ヘッド裏には同じくウェンジのプレートが貼ってあります。ボリュート部分もきれいですね。 ヘッド頂部の複雑なカーブが戸田さんのオリジナルを示すものでしょうか。 ヘッドの角などは、塗料が乗りにくいので難しいポイントですが、微妙な面取りもしてあって塗料もきっちり乗っています。 そういえば塗装が全体にセミマットなのも、クリーンさの印象の一つかもしれません。
もう一つ、ブリッジの形状も独特のもので、左右非対称のピン留めです。細く左右に長さのあるタイプで、 低音側に小さな出っ張りがあって斜めにカットされています。 振動の点での工夫でしょうか。ピン配列はRを描いて並び、ブリッジの外周と近くなっています。 サドルの厚みはやや厚め。ブリッジから出ている量を見ると、ネックセット角も少しありそうです。 このときの弦はダダリオだそうです。
ボディエンド部分。エンドピンはありません。ボディバインディングはローズのようですが、サイドのエンド部分はコアですね。 ロゼッタとおそろいです。シンプルですが材の美しさを生かすデザインだと思います。

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